実戦で安倍さんが「ホワイトスノー」を使うことはなかった。
どこまでも心優しき戦士だったあの人は、自らの絶体絶命の危機ですら、その技を使わなかった。
瀕死のあの人に代わって、我を忘れたあたしががむしゃらに放った青い光線。
あらゆるものを一瞬で消したそれは、確かにあの日のホワイトスノーと同じで。
「れーなと手をつないでさ」
それはきっと、れいなの能力を使うってことを指していて、
「さゆの癒しの力をさ」
力を発動したれいなの、少しだけあったかくなった手を強く握りしめて、
言われたとおりに治癒能力を発動させる準備をした。
「絵里が起こす、風に乗っけることができたらさ―――」
肌を撫でる優しい風が、空に向かって巻き起こる。
さゆみは、静かに力を解放した。
「―――世界の人たちに、幸せ届けることってできないかなぁって」
愛ちゃんは、不器用な人だから。
手を抜くことを知らない。そこまでしなくたっていいのにというほどに。
あたしはそれがこの人の一番の魅力だと思ってる。
その不器用さが生む惜しみない愛情が、あたしたちを包んでくれているから。
「愛ちゃんがあたしたちにくれる愛情、
あたしたちも愛ちゃんにたくさんたくさん返したいよね」
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Author : さぼてぃ