届くかどうかはわからない。でも、せめて想いだけでも。
もうすぐ誕生日のあの子のために、絵を描こうと思った。
家の近く、リゾナントの近く、いろんなところを散歩しながら見つけたもの。
それは道ばたに咲いていたタンポポの花。
申し訳ないと思いながら、一本だけ茎を折らせてもらう。
どこにだってある花だけど、この花を見るとちょっと胸がときめく。
家に帰ると、小さなプラスチックのケースに水を入れて、その中にタンポポを挿した。
それから何日間か、あたしはタンポポの絵を一心不乱に描き続け、
決して上手いってほめられないと思うけど、あたしなりに心を込めた一枚の絵が描き上がった。
どんな風や雨にも負けない力強い芯を持って、青空の下に堂々と立つタンポポ。
環境も立場も変わっちゃったけど、タンポポに似た彼女の性格はきっと変わってない。
けれど、その絵を送る方法をあたしは知らない。
彼女は、ダークネス。あたしは、今はリゾナンターとしてここにいる。
次の日、家に帰ったあたしの目に留まったのは、白く姿を変えたタンポポだった。
「うっそ…」
昨日までは、あんなにキレイな黄色い花を咲かせていたのに。ビックリした。
それと同時に、きっとあたしが絵を描き終えるまで待っててくれたんだと、一人で納得した。
あたしは、せっかく描いた絵を迷うことなく折り紙にして、飛行機を作った。
片手に紙飛行機、片手にまんまる綿帽子のタンポポを持って、窓を開ける。
―――届け、風に乗って、こんこんのところへ。
タンポポの綿毛と紙飛行機は、青く澄んだ空の中を高く舞い上がっていった。